割りとパナマ文書と近い仕事をしていたころの話

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山口にいた頃、ITの会社なんてなかったので仕方なく船の仕事をしていた。船の仕事といっても厳密には「船舶貸渡業」(せんぱくかしたわしぎょう)と言って、不動産業の船版みたいな感じだった。

内航船と外航船

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扱うのは主に商船と言われる貨物船などの商業船舶だ。その中でも日本国内を航行する内航船と、ワールドワイドに航行する外航船がある。自分のいた会社は外航船を専門に扱う会社だった。

はじめは内航船、会社を大きくして外航船に

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自分がいた会社も初代社長(ファミリー経営)の頃は瀬戸内海で砂利とかセメントとか油を運んだりしていたらしいが、そういった実績を買われ、最初は近くに本社を構えていた自動車会社の車両運搬船の外航船をやらないか?と声をかけていただいたのが外航船を始めたきっかけらしい。それ以来、外航船を専門に扱ってきた。

外航船の租税効果

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外航船は船舶を登記する国を日本国外にする。別に日本籍でもワールドワイドに航行は可能なのだけど、都合上Panama、香港、シンガポールなどのタックスヘイブンに登記することで、本来日本に登記することで発生するトン税だったり、色んな税金を払わなくても済むのだ。だから「パナマ船籍のなんとか丸」という船が沢山いる理由はそういう理由だ。

じゃ、日本の船主が全所有船舶を日本籍にしたらどうなる?

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恐らく全員経営破綻する。パナマなどのタックスヘイブンを利用することを前提としているからだ。

全く税金を払わないのか?

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そういうことでもない。基本的に日本の造船所で船を買う場合は日本の銀行から円で借り入れて買うのだが、パナマ等の現地法人には用船料(不動産で言うところの賃料)はほぼ米ドルで支払われる。現地法人名義で開設する口座は日本の銀行の口座だったとしても、ほとんどが外貨口座だ。日本にもってきて使うには海外の外貨預金口座から日本の口座に送金しなければならないし、手数料を取られて更に円になった瞬間に日本から課税される(金額によるが)。でもまぁ、それでも日本籍にするよりはだいぶマシだ。

反面、支出(船員費用等)はドルで支払うので直接ドルで決済する。円で借り入れている場合、当然だけど為替リスクが発生する。

彼らはセレブレティなのか?

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うん。そうだと思う。そんなスキーム、普通の会社に銀行が薦めたりしないと思う。その代わり数百億~数千億円という借入金が常にある状態なので、銀行も簡単に潰せたりできない。銀行が主導権をとったとしても、船舶の管理や運用は専門性が高く、競合他社に購入させる以外に無い。そういった強味をもった人たちであることは確かだ。

彼らがそういったスキームを使う優位性についてどう思っていたか?

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恐らく僕達平民を見下していただろうな。富を分配するという雰囲気もなく…また、同業界内の情報収集は古風な手法が多いが、情報を得るために課金をしなければならず、資産力が無い限り新参が参入して立ち回れる業界ではない。

まとめ

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危ない目にもあったりしたけど、正直言うと「面白みのある仕事」とは個人的に思わなかった。ちなみに会社でやたらと生命保険に加入させられており、僕が死んだら儲かる感じだった。死亡した場合の保険金は一旦、会社に支払われ、そのあとで遺族に支払われることになっていたけど、基本的にアウトローな人たちばっかりなので、契約・規約上そうなっていても素直に従うようには思えない。

そのノリでNHKを払っていなかったり、みたいなグレーな部分は徹底的に金を渋るし、それに対してドヤ顔をするくらいだ。個人的にあまり人として好きになれない人が多かったので、このまま長くいるのもしんどいな、という理由で山口→東京に転職を志したという経緯もあります。

なのでパナマ文書に僕の名前があっても(多分ないけど)特に美味しい思いなんかしてないです。ほんとに。

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